我々は暴力に屈しない、という言葉で


大粒の雨が重い音を鳴らして降っている。久しぶりにミチヨ食堂でパーティ、ライパチのオープン祝いも兼ねて。やっぱり楽しかった。誰の歌も今日聴けて良かった。生きている人間の声が聞きたい夜だった。天乃から耳元で「パパ、踊り疲れて眠くなってきたから帰ろうポヨ」と告げられて、エンディングに向かって盛り上がる宴の途中で西方を後にした。ポヨと言われたら聞くほかない。10年程前の川辺森の学校、土砂降りの中で踊り狂ったライブを思い出すほど、天乃と踊ったのだ。

昼に良美が未来学校にカメラを取りに来た。午後に予定されていた三吾のプール大会の応援と、撮影に意欲を示しつつ「安倍さん、演説中に撃たれたってね」と言いながら私からカメラを受け取った。最初は意味がわからなかった。脳が何も反応出来なかった。何も知らん私に声は聞こえているのだが、音が響いているだけだった。「え?安倍さんて安倍?」「そう」「あの?」「そう」などと声を発し、彼女の声を聴いて、それが脳に届くのを待った気がする。SNSを確認すると、既に幾つかの差別的で攻撃的な言葉が見られた。国政選挙の真っただ中に現役の元首相が演説中、手作りの銃で撃たれて死ぬという衝撃はこれまでに喰らったことが無い。これから、何が決められて、どうなっていくのか。更にわからなくなった。今夜は皆、言葉を綴り残すべきだ。断っておくが私は何も悲しくはない、感傷的な気分では一切なく、こうして、静かに、日々、確実に変化してゆく”社会”について、百年後に生きる我々のコドモたちの為に、今日起きた出来事を、感じた何かを、それぞれの言葉で残すべきだと考えた。憲政史上最長、アベノミクスの推進、非業の死。夜になると画面には際立つ言葉が並んでいた、我々は暴力に屈しない、という言葉で団結した人々がこれから何をするのだろうか、何かが変わるのだろうか。何が変わるのか。何を変えられるのか。信じられない出来事が起きたのだが信じられない出来事は定期的に起きることも知っている。とはいえ、とんでもないことが起きた、安倍が死んだ。昔は暴漢という言葉が使われていたが、今はテロリストと呼ぶのかね、これはテロなのか、クーデターなのか、謀略なのか、偶然なのか運命か。絶対に許されない卑劣なやり方で人の命を奪った酷い男と、その男についにそれをさせてしまった酷い社会と、この辛くて酷い「日々」を、”憲政史上最長”と称えられるほど長い間、国作りの真ん中にしててっぺんに鎮座していた人間の最期について。私たちは考え、綴らなければならない気がした。感傷的になってる場合じゃない、勘ぐっても仕方ない、すべてはいつか歴史が物語ってくれる。NOWOR、と歌うマレーズの声が耳の奥に刺さった夜のこと。



https://twitter.com/JamesSaito33/status/1545399728623403008 

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