【 口上荒磯 guitar by sou / 泰尊,TAISONG 】featuring 笑福神楽団

友人宅での何気ない会話の中でしか出会えない神様がいる。俺たちはそれを閃きと呼んでいる。その閃きを、生活の中でいくつ形にできるか、人生の醍醐味はそれに尽きるといっても過言ではない。”会話の中でしか出会えない神様”などと言ってはいるが、それはいつだって14歳の自分かもしれないし90歳の俺かもしれない可能性を捨てきれずに居る。或いは、似たような性格のご先祖がどこかで、それをささやいてくれているのかもしれない、そうなるとやはり、それは神様なんじゃないのって話。鹿児島とはいえ1月は寒い。


錦江湾に面した、小さな港町の路地裏で撮影に臨んだ。被写体はラッパーと神楽。”ワンマンライブ”まで2週間を切ったラッパー・泰尊の現在と、ずっと昔から変化を繰り返し、今もなお受け継がれる神楽の舞い手・宮川哲郎の交わるところを撮りたいと思った。イメージはすぐに沸いた、二人とも快く承諾してくれて、12月の閃きの輪郭が描かれた。


ひとつの仕掛けとして、彼らは初対面である。 撮影開始の3分前に顔を合わし、ろくに挨拶もないまま、まずは神楽師が舞う。路地裏の街灯の下を鬼が舞う。曲は2分20秒、ほんの短い時間の最初の1分で、隣りにいた泰尊にナニかが飛び火したのがわかった。小さな火花のように思えたソレは彼の中の何かしらのスイッチが入る音だったのかもしれない、自然と鼻息が荒くなり、太くなる眉毛と、燃えるヴァイブス、もう、アントニオ磯 泰尊と呼びたくなる。そういえば、古舘伊知郎がアントニオ猪木の引退試合で言っていた「猪木は、すべての人間が内包している闘う魂をリング上で代演する宿命にあった。しかし、この瞬間をもって猪木はリングから姿を消す。我々はどうやって火を灯していけばいいのか」 このナレーションが今も忘れられずにいる。



残念ながら古舘伊知郎はアントニオ猪木を失ってしまったが、俺のアントニオ磯は生きている。目の前で、今から、この鬼に挑むのだ。本物の、ただならぬ空気である。2分20秒の神楽師の短い舞いは、空気ごと路地裏の風景すら変えた。面越しに聞こえてくる荒れた息遣いが熱風に思えた。

それから泰尊が、靴を脱いで真冬の路地裏に立った。


それでは、その様子をご覧ください、







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